沖縄『慰霊の日』に

 「原爆の図」の丸木俊、丸木位里夫妻が、戦争への怒りと、鎮魂と平和への願いをこめて描いた記録のえほん「おきなわ島のこえ」を紙芝居で上演したい、しかも沖縄『慰霊の日』に!

 鍵本景子さんからそんなお話をいただいたのは、緊急事態宣言が解除されたとは言え、まだまだ世の中あたふたしている5月末(未だにあたふたしてますが……)。こんな時に人を集めていいんだろうか?だいたい、みんな来てくれるのかな……なんて思いが頭をもたげるような暇なく、「やってみよう!」という気持ちが先ず湧き立ちました。著作権者、出版社と自ら交渉して、紙芝居も手作りして……、そんな熱い気持ちを持った景子さんが、わざわざシントンにそんな相談をしてくれた。こんなに嬉しいことはありません!やってみましょう、ぜひやってください!心配なことはいろいろあるけど、これは絶対にすてきな会になる。そんな直感がありました。

そして迎えた当日。ちょうど夏至の頃で、開演の19時でも辺りは暮れきらぬ中スタート。優しく淡々とした中にしっかり芯がある、そんな景子さんの語り口に、お客さんはぐっと集中して耳を傾けます。5分おきに通る国分寺線の音も、どこか不思議なBGMになってしまうような空間で、あの沖縄戦のお話が、丸木夫妻の絵とともに展開されてゆく。

いつの間にか辺りは暗くなり、お話は終了。でも、なんとなく皆さん、口を開けず席も立てず……。しばらくすると、ぽつりぽつりと、お客さんの中から声が上って、沖縄のこと、戦争のこと、原爆のこと……みなさん、胸にしまってあることを、少しずつ、とつとつと語ってくださって、中には爆笑をさそうようなお話も飛び出したりて、小さな小さな会ならではの、アットホームな空気に包まれました。

景子さんにとっても、この紙芝居は今回が初演ということで、手探りな部分もあったようですが、手ごたえもじゅうぶんに感じてくださった様子。「ぜひ続けて下さい」とか、「子どもさん向けの企画もやって」といった声も聞かせていただき、本当にやってよかったなと、私たちも思っています。

一人でも多くの人に見て、聞いてほしい、鍵本景子さんの“紙芝居” 「おきなわ島のこえ」でした。

Café シントン/東京都小平市たかの台 西武国分寺線鷹の台駅 喫茶店